
※本文中の声は、実際にお客様からいただいたレビューをもとにしています。ご本人が特定されないよう、お名前などの情報は除き、一部の表現は要約しています。
引き出しの奥に、ほとんど着けていない下着が入っている。捨てるには新しすぎて、着けるには合わなすぎる。そういう1枚を持っている人は、たぶん少なくない。1枚ではなく、何枚も持っている人もいる。レビューの中には、その引き出しの中身を、静かに書き残していった人たちがいる。
捨ててきたもの
あるレビューは、こう始まっていた。
お金と品物を捨ててきました、という言い方に、立ち止まった。失敗した、合わなかった、ではなく、捨ててきた。買うたびに期待して、着けるたびに違って、そのたびに引き出しの奥へ。この方は、昔買った高級なブラを傷んでもなお使い続けていたという。新しく買うことへの信頼が、もう残っていなかったのだと思う。
似た書き出しのレビューは、ほかにもある。締め付けの強い下着で体調を崩しやすい体質だという方は、「下着は数えきれないくらい捨ててきました」と書いていた。数えきれないくらい。その言葉の後ろに、数えきれない回数の期待があったはずだ。
諦めの正体
「諦めていた」と書く人のレビューを読んでいくと、諦めの対象は、商品ではないことに気づく。
この方は、カップは合わないのに胸は押しつぶされる、という状態が「当たり前でした」と書いている。何度も試して、何度も合わなくて、いつからか「合わないのが普通」になった。諦めというより、期待することをやめた、というほうが近いのかもしれない。
諦めには、もうひとつの形もある。「他に良いのないし仕方ないよなぁと今まで諦めていました」と書いた方がいた。体格に合うカップがなく、段差ができるのが当たり前になっていたという。この「仕方ない」は、悲しみですらない。天気の話をするような、平らな声だ。悩みは、長く続くと悩みの形をしなくなる。ただの前提になる。
合わない下着を我慢して着け続けることと、探すのをやめること。多くの場合、この2つはセットで起きている。そして、どちらも外からは見えない。引き出しの奥と同じで、本人しか知らない。だから、問い合わせの窓口にもレビューにも、諦めている最中の声はほとんど届かない。届くのは、諦めが解けたあとの声ばかりだ。私たちが読めているのは、氷山のいちばん上だけなのだと思う。
諦めが解ける日
冒頭の「捨ててきました」の方のレビューには、続きがある。今回も駄目だろうと、諦め半分で買ったのだという。着けてみたら、驚くほど快適だった、と。そしてレビューの終わりに、こう書いている。
「とにかく自分に合うものが見つかって嬉しいです!」
捨ててきました、で始まった文章が、全部捨てて買い足します、で終わっている。同じ「捨てる」なのに、意味がまるで違う。前者は敗戦処理で、後者は引っ越しだ。合わない期間の記録が、合うものが見つかった日に、はじめて過去形になる。
「一生無縁」と書いた方も、サイズ交換の仕組みを使って2種類を試し、どちらもぴったりだったと書いている。「仕方ない」と書いた方は、試しに買ってみたら段差ができなかった、と少し驚いたように書いていた。長い諦めの解け方は、案外あっけない。何年ぶんの「仕方ない」が、試着の数分でほどけることがある。
諦めていた期間を、無駄だったとは書きたくない。
「何着も買っては捨ててきた」ということは、何着も試したということだ。「数えきれないくらい捨てた」人は、数えきれないくらい探した人でもある。諦めという言葉の中には、探し続けた記録がそのまま入っている。本当に諦めた人は、たぶんレビューを書かない。引き出しの奥の1枚を覚えている人は、まだ探している途中なのだと思う。
私たちにできるのは、その「もう1回」のハードルを下げておくことくらいだ。試して、合わなければ交換する。その仕組みがあることが、諦め半分の1回を支えることがある。何度も裏切られてきた人が、もう一度だけ試すとき、その一歩は軽いほうがいい。「ダメ元で」「諦め半分で」。そう書きながら試した方たちの、その軽さを、後ろめたく思う必要はまったくない。軽い一歩から始まった話が、いちばん遠くまで行くことがある。
ラディアンヌが交換の仕組みや測り方のページを整え続けてきたのは、売り手の側にある知識と手立てを、できるだけ買い手の側に渡しておきたいからだ。諦めの一歩手前にいる人に、仕組みは口出しをしない。ただ、そこにあるだけでいい。そう思って、置いてある。
別の方のレビューは、こう結ばれていた。「サイズ選びが難しいですがぴったりなモノに出会えると着け心地最高なので諦めずに頑張って合わせてみることをおすすめします」。諦めずに、という言葉を、諦めかけたことのある人が書いている。その順番でしか、書けない言葉だと思う。
サイズを測り直してみたい方へ:サイズの測り方(公式ページ)
ラディアンヌという会社の原点は、こちらに書いています:ラディアンヌストーリー